ほったらかし投資FIRE 著者ゆうパパ
少し前から流行り、やや下火にあるFIREに関する本を読んでみました。
こちらの本のサブタイトルには手間なく7年で早期リタイアする「米国株」高配当再投資法と記載されている通り主に米国株を中心としたFIRE実現の為の手段が書かれています。
ファイナンシャル・プランナーという立場からと、一読者として2つの視点からこの著者の内容が果たして、どれだけの人に対して有効であるのかを考えながら
内容を読み進めて行きたいと思います。
結論から言うと嘘ではないが再現性が万人向けではない。
内容自体は実際にこの著者が達成しているので嘘ではないのだが実際のプランがやや非現実的部分があり万人がこの方法を採用出来るという訳ではない。という内容でした。ただ、お金について学ぶべきという考え方で言うのであれば軽い入門書としては多少の参考になる部分があると思いますので文字を読むのがめんどくさいけれど少し勉強しておきたいという人には最初の本としては中身が程よく薄いので最適かもしれません。ただごれはあくまで私の考えなのでこの方の方法を実践出来る方は再現に挑戦することは否定しません。
なぜ、私がそう考えたのか。
前提条件としてこの本では米国株の高配当ETFを買い続けることで配当所得を増やしていきFIREを目指すという内容自体は至極、単純かつわかりやすい内容です。また、この考え自体には私も賛成出来る部分は存在する為、あながちすべてが誤りであるとは一切思っていません。その中で気になる点をいくつか並べて行きたいと思います。
- 米国株が絶対的という考え方・・・確かに米国株や米ドルは成長性で考えれば今後も成長が期待のできるという意味で間違いでは無いと思います。ただやや米国株への異常な信頼性が気になります。先のことは分かりません。また著者が米国が成長を今後も見込める理由に人口増加(移民)を上げていますが移民政策に関してはEUなどヨーロッパ諸国でも行われていますが正直なところ失敗に終わっています。そのことからも米国が必ずしもこの移民政策が常に良い方向へと進むという保証はありません。また、米国は常に様々な金融危機から復帰し成長とイノベーションを起こしてきた国だと述べています。確かにマイクロソフトやアップル、メタ(旧フェイスブック)やアルファベット(Google)など革新的企業が次々に生まれていることは事実です。しかしアメリカという国そのものはまだ出来て間もない、歴史の浅い国です。そのほころびが今までの他国のように崩れるタイミングが来ないという保証性は無いということを公平に見るのであれば語るべきだと思います。
- インデックス投資に対する考え方・・・インデックス投資は最近ではメジャーな言葉となり著者も否定はしていませんがこれでは時間がかりすぎるという返答をしています。また取り崩しの4%ルールへの疑問も呈しています。ただ、それに対して推奨する投資方法がそもそも、インデックス投資方法とあまり遜色なく、むしろ資金面問題をスルーしている様に思えます。
- 利回りが現実的に今後、想定の通りなのか?・・・年利12%で回る計算など少し見積もりが甘いのでは?という感想です。
- 実際の投資への具体例を実践出来る人間がどれだけいるのか?という疑問・・・著者の手間なく7年でFIREするという考え方の具体的実践方法が後半に記載されているのですがその内容が少し非現実的な部分が大きい気がします。というのもその方法が
- 初期資金にまず500万円を用意しかつ月10万円を特定米国株ETFに投資+ボーナスをつぎ込むというもの
企業規模別の初任給を学歴別にみると、大学卒では、男性は大企業(常用労働者1,000人以上)で215.9千円、中企業(同100~999人)で211.1千円、小企業(同10~99人)で206.0千円、女性は大企業で209.7千円、中企業で205.2千円、小企業で201.8千円となっている。また、高校卒では、男性は大企業で169.1千円、中企業で167.6千円、小企業で171.8千円、女性は大企業で166.9千円、中企業で163.6千円、小企業で163.8千円となっており、大学卒及び高校卒の男女いずれも、全ての企業規模で前年を上回っている。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/19/02.html
初任給の企業規模間格差(大企業=100)を学歴別にみると、大学卒では、男性は中企業で97.8、小企業で95.4、女性は中企業で97.9、小企業で96.2となっている。また、高校卒では、男性は中企業で99.1、小企業で101.6、女性は中企業で98.0、小企業で98.1となっており、男性の小企業では、前年に引き続き大企業を上回っている
上記は厚生労働省のデータですが大卒平均が大企業においても22万ほどの世の中でその上、手取りと考えると16万ほどが平均となるでしょう。この中から500万円の資金をまず作りかつ10万円を毎月投資を行い、ボーナスを全額、投資に投げられるだけの人がどれだけいるのでしょうか。もちろん著者はこの元手や投資額を少なく見積もったパターンも紹介していますがそうなるとそもそもインデックス投資で良いのでは?という話に戻ってしまいます。
本を売るためにインパクトは必要だが・・・
売れる本を出版する為にはこのように手に取りやすいタイトルかつ誰もが求めるキャッチコピーが必要なのは分かります。そして著者自身もそれを理解しているからこそデメリットや色々なパターンなどもきちんと掲載している辺りにおいては好感は持てますがもう少しなんとかならないものかと思う部分が私としては感じ取れます。結論としていくらいいことを言っていても世の中のFIRE本の有象無象の一つという結論に達してしまう内容になってしまうことはもったいないことです。
FIREを目指したいあなたへ
FIREを目指すことも投資で儲けることも悪いことではありません。私自身、投資を行っていますしアドバイスもしています。出来ることなら私自身もFIREをしてみたいものです。ただなんの為にそれを目指すのか。という点ときちんと自身の経済事情や知識を得なければ世の中にあふれる情報に食い破られてゴミのように捨てられてしまいます。これは脅す訳では無いのですが先日、私がある喫茶店に友人とコーヒーを飲んでいると驚くことに周り数席が情報商材の商談が行われているという奇妙かつ不快な場に出くわしました。それらすべてを否定する訳ではありませんが人の弱みや優しさにつけ込む卑怯な人にはならないで下さい。それを理解した上でFIREを目指して下さい。